被災した方々と接する時に、大切な事

心理カウンセリング
04 /23 2011
3月11日に東北関東大震災が発生してから、一ヶ月以上が経過しました。

ようやく、被災地で生活しておられる方々の状況も知ることができ始め、中には連絡をとりあったり、実際に会いに行かれた方もおられると思います。

無事なご様子に安堵した方、凄まじい光景に強いショックを受けた方、あまりにも変わりすぎてしまった日常に呆然とした方、被災地におられる方々だけでなく、被災地におられない方々の中にも、様々な心のありかたが起こってくる時期です。

また、原発に関しては今もなお、不安な日々を過ごしす方もおられると思います。


この一ヶ月を過ごし、様々な状況で日々を過ごす方々の、環境や心境に変化があったことと思います。

そこで、状況が少しづつ分かり始めた今後の被災者の方々に、言ってはいけない言葉があります。

それは 「 比べる言葉 」。
そして 「 頑張れという言葉 」。

例えば、

「Aさんはご家族が亡くなったけど、あなたは無事で良かったね」
「Bさんはお仕事先がなくなってしまったそうだけど、あなたはそうでなくて良かったね」
「Cんはもっと大変なのだから、あなたは頑張らなきゃ」

等、他にもたくさんの比べる言葉、頑張れの言葉があるでしょう。

どうしてこれらの言葉を、いま使ってはいけないのか。

「 他人より恵まれた状態で生き延びた自分 」 という意識は、時に、生き延びたことへの罪悪感を生みます。
破滅的な状況の中、生きてくださった事は素晴らしいことです。
なのに、生き延びたことを後悔する。
それは、あまりにも酷いこととです。

そして、過酷な状況で生き延び、生活している現在、すでに被災者の方々は充分すぎるほどに、頑張っておられます。
すでに全力で頑張っている方々に、さらに 「 頑張れ 」 「 頑張れ 」 と投げかけることは、言葉が生む暴力です。


もちろん 「 頑張って欲しい 」 という気持ちは、応援したい気持ち、無事を祈る気持ち、安全でいて欲しい気持ち、生きていて欲しい気持ち、そんな暖かい気持ちから発せられるものです。
決して傷つけたいわけでないのは、安全な場所にいる方でしたら理解できるでしょう。

だから、被災者の方々に応援する気持ちを伝えたいときには、

「あなたがこれからも無事に生きられるよう、私達が頑張ります。だから、元気で生きていてください。」

とお伝えすれば良いです。
(※この言葉は、被災地で支援活動をされた、ある看護師の方の文章からお借りしました。転載自由にして下さったこと、この場を借りて、感謝をお伝え致します。本当に、ありがとうございます。)


「 頑張る 」 という気持ちは、被災者の方々ではなく、ライフラインの確保されている私達に向ければいいのです。

けれど、自分自身に対して 「 頑張れ 」 と投げかけた時、その言葉があなたにとって重たければ、どうぞ 「 頑張れ 」 の気持ちを手放してください。
「 頑張れ 」 の言葉が重たければ、あなたは今、もう頑張っているからです。

今は、直接の被災者の方々や、間接的な被災者の私達を、重く追い詰める言葉は要らないのだから。



上記の例えに出した比べる言葉、頑張れの言葉は、今、とても発せられやすい言葉です。
実際、耳にされた方もおられるでしょう。
なぜ、こんなに悲しい気持ちのすれ違いが起こるのでしょうか。

それは、被災者の方々と私達とに “ 心の温度差 ” があるからです。


目の前で人が波に飲まれていく光景。
今まで暮らしていた街や家が倒壊してしまった現状。
これからの未来への不安。
ライフラインが整わない生活。
満足に情報の得られない状況。


これらの事は文章にすればたったの一文ですが、経験された方々にとっては、多くの状況・環境になります。

亡くされた方が、ご家族、ご親戚、お付き合いされておられる方、ご友人、知人の方、人間でなくとも一緒に暮らしていた命、その方にとってどんな存在であったか。
目の前で、家族が亡くなる瞬間を見た方もおられるでしょう。
また、死亡者リストの中に、縁ある方の名前を見つけた方もおられるでしょう。

亡くなった方との関係次第で受ける痛みの大きさが変わるのは、とても自然なことです。
決して、その方のこころが冷たいわけでも、残酷なわけでもありません。
けれど、関わりある命の死というものが故人との関係の深さとは別に、人の心に深く大きな傷を残すことは、やはり当たり前のことです。

そして、暮らしていた家が、住み始めてこれから歴史を刻んでいく場所であったのか、これからも安心を約束する場所であったのか、長く住み思い出がいっぱいの場所だったのか。

被害にあった場所が、新生活を始める場であったのか、日常を大切に過ごされていた馴染みの場所であったのか、静かに余生を送るための終の地であったのか。

電気、ガス、水道、医薬品、食料、生活消耗品、これらのどれが復旧していて、どれが足りていないのか。

今回の東日本大震災の被害状況や、いま生活している場所の支援について、どれだけの情報を得られているか。
そもそも、情報を得ることができる環境かどうか。


これらは、その方、おひとりごとに異なるのです。
決して 「 被災者 」 という言葉で、ひとくくりにできません。


東日本大震災は、1万4000人が亡くなったという一つの出来事ではなく、人が亡くなるという、言葉では現しつくせない痛みが、1万4000回も起こりました。
そして故人と繋がりある多くの方々の心に、今も影響を与え続けています。

そして、生きる基盤となる場所が無くなること、お金を得るために必要な仕事が無くなること、安全に生きることが難しい環境、これらでも同じことです。
比べることなど到底できない痛みが、正確な数字に表せないほど、起こりました。

今回の災害で受けた心の痛みと強さは、その方にしか実感できません。
その方の痛みと傷が他人と比べて大きいか小さいかなど、誰に決めることができるのでしょうか。

だから、比べてはいけないのです。

これから先、被災者の方々と接する時に大切なのは 「 被災者の方それぞれに状況は違う 」 ことを意識すること。
その為に 「 心の状況も、お一人ごとに違う 」 ということ。

そしてこれは、間接的な被災者である私たち同士にも、同じことが起こっています。
直接の被災地にいない私たちの間にも “ 心の温度差 ” は起こっているのです。


どうぞ、 「 被災者という、大勢のなかの一人 」 ではなく 「 被災した、ひとりの個人 」 である事をお心にとどめ置きください。

心の温度差が起こす気持ちのすれ違いが減り、人を生かし合う暖かなコミュニケーションがたくさん起こっていくことを、切に願います。
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村上 裕

【 ごあいさつ 】

はじめまして。
2007年に創業した、カウンセリングルームP・M・R代表の、ゲイの心理カウンセラー村上裕と申します。

性自認は男性。
セクシャリティはゲイ(男性同性愛者)です。

ゲイの心理カウンセラーではありますが、セクシャリティの枠にとらわれず、いろんな方からのご相談をお賜りしています。
ゲイの方から心理カウンセリングのご依頼を頂くことが多いのは事実ですが、
レズビアンの方、
トランスジェンダーの方、
クエスチョニングの方、
ゲイのご家族(妻、親御様、兄弟姉妹)の方、
ゲイに全く関わりのない方、
からのご相談も頂いています。

皆様、ありがとうございます。


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どうぞ、お気軽においでくださいね。


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苦しみの底に居る人の、生きる支えになるような暖かさ。

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そして、そんな人間といういきものが、私は本当に大好きです。


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